銀塩日和

フィルム写真と冒険。そしてSDM生活。

なぜ毎日フィルムカメラで写真を撮るのか。

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フィルムカメラと生活について書こうと思った。そんな中で僕がアイキャッチに選んだのはこの写真。最高の写真でもなければ、最低の写真でもない。だいたいこんな感じ。身の丈十分で、毎日こんなちんたらした生活を送っている。

 

どうも、僕です。

2年くらい前から僕は毎日フィルムカメラで写真を撮っている。特別にモデルさんを撮影していますよ、とか山に登ってい風景を撮っていますよとかそういう訳でもない。ただ、毎日なんでもない生活を送っているサラリーマンが、なんでもない日常を写真に撮っているだけだ。字面で見てもどこに面白さがあるのか全くわからない。別に誰かに言われて始めた訳でもないのだけど、なんでこんなこと始めたんだっけか。

 

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日常で足を止めることはあるか?

毎日フィルムカメラで写真を撮っている、といっても具体的に毎日何をやっているんだろうか。

 

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平日朝、日が昇る頃に一度起きる。それだけでは頭が起きないので大体二度寝をする。次に目を覚ますのは6時と7時の間くらい。そこでようやく起きようかという気分になり重たい体を引きづりながらシャワーを浴びる。適当にヒゲと格闘して、他人様に不快でない程度の身だしなみを整えたら、カメラを一つだけカバンに滑り込ませて家をでる。

駅は人だらけで一層気分が重くなる。僕よりもベテランであろう紳士たちは視線を落としてスマホでゲームにいそしむ。誰とも目を合わせないように、誰の邪魔にもならないように体を縮めて電車に揺られる。中吊り広告にはもう飽きた。押し出されるように車両を飛び出して改札を出る。自然と出来上がった人の列に流されて隣の駅へ乗り換えをする。

ふと列の横に目をやると、朝の陽に街路樹が照らされて緑の葉がキラキラ光っている。会社員の列を外れカバンからカメラを取り出す。目の前が"いい具合"になるとこをを探して立ち位置を決めたら、なるべく光を生き生きと焼き付けられるようにファインダーを覗いて露出を決める。あとは息を止めてシャッターを切るだけだ。

 

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何が良いのかわからないけど、ふとシャッター切ってみようかなって思う瞬間がある。

 

その時僕はカメラを構えたまま一人列とは別の場所に立っている。きっとカメラが手元にないと、あの死んだ顔の列から飛び出ることはないんじゃないだろうか。味気ない毎日の雰囲気に圧殺されて自分を見失いそうになる僕を、救い出してくれるようだ。

 

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その場では何を撮ったかわからない。でも何も考えずに生活をしていたら出会えないような、何か素敵なものを収めることができた気持ちになる。この嬉しさで、少しだけ視線が前を向く。

会社の最寄り駅でも足を止めてファインダーを覗く。今日はいつもと違う電車が停まっている。足元だけ見ていたら気付けないことかもしれない。

 

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進めサラリーマン。負けるなサラリーマン。

 

きっとデジカメや携帯だったら足を止める必要なんてない。オートフォーカスで歩きながら写真が撮れる。でも僕が使うような機械式フィルムカメラは無理だ、足を止めないと写真なんて撮れやしない。立ち位置を決めて絞りを選ぶ。ファインダーを覗いて露出計を見ながらシャッタースピードを決める。あとは構図を考えながらフォーカスを合わせてようやく一枚撮れる。デジカメや携帯でパシャパシャ撮る人からしたらこのお作法が「全部無駄」って言われちゃうのかな。ああ、そうか、そもそも会社と家の往復で写真を撮るのが無駄なのか。

 

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帰りだって無駄に写真を撮るよ。夜の光が綺麗だ。

 

フィルムカメラを手にしたことで、いつの間にか生活の中にすべりこんできたこの無駄が僕には良いんだと思う。

 

 

これは僕が大切にしたい無駄だ。

 

僕らの社会は複雑で、何も考えずにただ生きていくにはなかなか大変なものだと思う。もちろん誰だって、毎日何も考えてないなんて言わないだろう。僕だってそうだ。でも単調な毎日の繰り返しはその考えをダメにする。感覚を鈍らせて視界を狭くする。重たくなった思考と、パッとしない気持ちが視線を落とさせる。そんな瞬間は誰にだって、いつだって訪れ得るものじゃないだろうか。

 

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夕方の散歩道。ふと気づいたら空のグラデーションが綺麗だった。これだって無駄なものだ。

 

でも、そんな単調な毎日の中に、一つでも構わないから無駄な要素を入れ込むことで、少しでも心を豊かにすることはできないだろうか。ある人は、こだわってコーヒーを淹れるだろう、ある人は毎日走って汗をかくだろう。僕はカメラという道具を持ち歩くことにした。このフィルムカメラっていう古い機械は、そんな時に僕の視線を上に持ち上げてくれた。ファインダーから覗いた空がすごく青かったことに気づかせてくれた。足を止めてシャッターを切った瞬間に、出来上がった写真と対峙した瞬間にMPを回復させてくれた。

 

毎日写真を撮ってプロになれるとか、写真家になれるとかそういうのは全くないと思っている。だってそんな立派なことは全くできていないもの。

僕が思うのはそれよりも、もう少しささやかなこと。写真を撮る生活をすることで、少しだけ自分の生活について考えることができるようになるんじゃないかということ。ないがしろにしがちな毎日の生活を少しだけ大事にできるようになること。これが僕が毎日フィルムカメラで写真を撮る理由だろうか。

だいだい僕の使うカメラなんて、足を止めて頭を使わないとまともな写真なんて撮れやしないんだから、強制的に足が止まって頭が回るさ。効率的に生活しようとしたら無駄だらけだ。

 

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お題を作ってみてから色々と言葉を紡いでみたけど、やっぱり、思っていることをうまく言語化できないな笑

まぁ今のところはこんなところです。

 

お題「やっぱりフィルム写真が好き!」

 

思うところがあれば、皆さんのお話も是非とも聞いてみたい。

こちらからは以上でーす。

 

 

お題に回答くださった方々

restructure.hatenablog.com

www.spaceflier.com

blog.tako3.xyz

 

お題の初めだからまぁちゃんと考えたことを書いてみたけど、今度からはフィルム関係の楽しかったよっていう記事を書いていくと思われる。(自信はない)