銀塩日和

フィルム写真と冒険。そしてSDM生活。

不遇な"モノ"を僕は愛す。それがどんどん出てくる世の中になれば楽しいのに。

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"不遇カメラ① RICOH GXR レンズ交換でなく、ユニット交換カメラ"

 

 

どうも、僕です。

いきなりですが、どうしても不遇なモノってありますよね。そして、ありましたよね。

なんでメーカーさんはそれを作っちゃったかなぁ、ってやつ。

当然我々ユーザー目線では、そんなの売れるわけないじゃん、って思いますし、数年後にあんな商品あったよねって、まるで「あの人は今」みたいな扱いでネットの記事でお目にかかるようなモノのことです。

 

僕はこういうモノが狂おしいほど好きなんです、っていう話。

 

具体的に想像できない方もいるでしょうから例を挙げましょう。

 

PSP go ってあったよね。

覚えている方いますかね?PSPといえばSonyの看板商品Playstationのモバイル機。当時まだモンハンの影響でPSPが売れに売れていた頃、「PSP go」という別バージョンの機種が発売されていました。

 

 

実はその頃はもうゲームをプレイすることもなかったので詳しくは知らないのですが、そのPSP go、ひっそりと発売されたわけではなく、それはそれは派手にキャンペーンされて世に出ました。TVCMで「PSP go」という商品名を子供の声で読み上げられるのを結構印象的に覚えています。

 

そんな派手派手リリースを迎えたPSP goたんですが、これがさっぱり。

実際にSonyの中の人に聞いたわけではないのでどんな具合かはわかりませんが、どうやら発売から1年も経たないうちに大幅値下げ、2年後には出荷終了と僕みたいなメーカーの中の人からしたら大幅な人事異動を感じずにはいられない状況だったようです。企画ロットに達したかも、、、不明です。

 

そんなPSP goに初めて触れたのは一昨年のこと、弊社の男子寮である一人の同期の部屋に入り浸っていたころ、その彼の部屋のマウンテンサイクルから発掘されたのです。

一台のPSP goが。

これが面白がって触っていると結構五感に訴えてくる作りをされている。

サイズも今のスマホと比べると非常にコンパクト。だからと言って小さすぎることもなく、メディア端末としては絶妙なサイズ感。操作部を出すスライドの感触は心地いいし、その可動部にもそこそこの剛性を感じました。ボタンの感触自体もかなり良好。(まぁ僕の最後に触れたモバイルゲーム機はワンダースワンなんですが)

 

 

スマホの普及以前を覚えている方なら想像がつくかもしれませんが、ある程度技術が熟成したガラケーのようなしっかりした作りでした。

 

完全素人が考えるPSP go の売れなかった理由

この問題については僕が考えるより遥かに深く考察されている方がネットには山ほどいますし、なんというか僕の考えた結果って結局その方々の足元にたどり着いただけなんで、ブログに書くのも恥ずかしいのですが。。。

 

でもまぁ作りが良かろうと売れなかったのは事実らしいんです。

で、なんで売れなかったのかということを、友人知人その同期に聞いてみまして、彼らは一様に同じことを言うんですよね、

「goが何がしたいかわからなかった」

ふむ、どういうこと?と面白そうだから聞いてみると、goというビジネスそれ自体の持つ特徴がユーザーにうまく伝わっていない&機能していないようでした。

 

 

 

 

例えば、「所謂カセットを使えない(意味のないもの)ようにした。」

goの数ある特徴のひとつとして、ゲームソフトの入手の仕方があります。

goはダウンロード専用機でした。

Sonyの運営するストアサイトからコンテンツをダウンロードしてプレイする、その目的のためのハードです。前進PSPはソフトROM「UMD」を街のゲーム屋さんで購入してプレイするのとダウンロードの両方ができることを考えると、goは「パッケージ(カセット)購入そのものを切ろうとした」というように思えます。

 

PSP UMD ソフトケース (2個セット)

PSP UMD ソフトケース (2個セット)

 

 

 

 

それはつまり、まさしくダウンロードが増えた今の2015年現在のように。(パッケージ売り、ハードROM売りがなくなったわけではないのは理解してますが減りましたね。。。)

 

ただ、PSPシリーズというのはゲーム機であったので家にPSPのパッケージですでに購入してあるゲームがgoでは遊べない、別にダウンロードで買わなきゃいけない、そのダウンロードサイトは正直使いづらい、そして小型化されたハードはゲーム用としては使いづらい。。。等々、その事業としての意図がゲームユーザーには伝わらずに、「非常に遊びづらいゲーム機」という結果に終わった、という。。。

 

じゃあ、goのメッセージって、意図ってなんだったんでしょうね、ってことを考えてみました。

ゲーム用としては微妙なキーレイアウトや大画面と小型化などから明らかに携帯性とコンテンツ対応性を広げようとしていることから、僕にはgoがやりたかったのは「ゲームをダウンロード専用にする」ではなくて、「コンテンツとユーザーの関係性から物理的制約をはずす」だったと思うのです。

僕の拙い語彙力でいうなら「いつでも、どこでも、買える・味える」その世界への入り口、インターフェースとしてデザインされたのではないかと。

 

多少ゲーム機のusabilityを落としてでも、もっとコンテンツが加速して届く。その情報が加速する未来を描いたんじゃないかなぁと妄想しています。

今のスマホなりタブレットが実現しているような。

もしくは別の目的のための端末かもしれませんし、今となってはそんなこと確かめようもないのでどうでもいいのですが。

どちらにせよ、響かないお披露目をしたならそれが失敗なのかもしれません。

まぁ、このメーカーとユーザーのすれ違いがあったとしたら、それでメーカーが失敗したんだとしたら、失敗の烙印を押されたこのgoたんは間違いなく不遇ですね。

 

なんでそんなモノが好きなのか

繰り返しますが、僕はこういう不遇なモノが狂おしいほど好きなんです。

このゲーム機だけじゃなくてもいろいろな業界にメーカーとユーザーのすれ違いがあったモノってありますよね。(モノだけでなくサービスも、つまりはプロダクトかな?)

 

 

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"不遇カメラ② ミラーレスなのに一眼レフ以上の高画質・ビッグサイズ"

 

 

僕がメーカーサイドの人間だからかもしれませんが、もっとこういう結果不遇になってしまうようなモノがいっぱい出てきて、「自分が自分が」と訴えてくるような世の中になればいいのに、とすら思っています。

 

ちょっと長いので「結果不遇になってしまうようなモノ」=「尖ったモノ」としましょう。

 

尖ったモノはその企画者(デザイナー)からの提案です。

未来の提案です。

 

「こんな未来はどうだろうか、便利だと、楽しいと思わないか」という大きな提案です。

 

勝てば官軍とはよく言ったモノで、提案を受け入れられ勝利したモノは、世界を変えます。産業と生活を変えます。

それは、これを口にすることすら「今更www」って馬鹿にされそうですが、Appleジョブズとウォズが作ったプロダクトの一つを検索すれば自明ですし、世間様で「イノベーティブなプロダクト」と呼ばれているモノが何を変えたかということを調べるとお腹いっぱいになる程思い知らされます。

 

僕はこの種の提案がもっと頻繁に飛び交う世の中を夢想しているのです。

誰もが勝利を手にしようとして。

 

未来の提案について「数打ち当たる」を肯定するわけではありませんが、提案をする機会が増えること、それをユーザーが能動的に選択して誰もが未来について考えること、身の回りがそうなることを夢想しているのです。

 

なぜかって?その方がワクワクするから。

 

現実的でないことは理解しています。

「未来の提案をする」ことは一企業・一個人にとって大変な負担です。世間様からは博打とすら言われ、堅実に生きていきたいという欲求と大いに逆行することになるでしょう。

また、ユーザーにしても、「能動的に未来を選択する」という行為は大きなカロリー・ストレスになるはずです。一流のビジネスマンと言われる方々がコストをかけて選択を減らすことをしている昨今、これだけ選択をせまられる現代の生き方にさらに選択肢を増やす生き方が受け入れがたいことは容易に想像がつきます。

 

 

それでも、「未来(先)を考えずに他人に合わせる」「未来の提案を誰もしなくなる」そんな世の中にワクワクしないのが僕のようです。

 

企業・個人というレベル感の違いはありますが、誰もが未来に対する傍観者でなくプレイヤーたる未来にワクワクするようです。そして自分もそのプレイヤーでありたい、提案する方のプレイヤーでありたい、そういう人間のようです、僕は。

だんだん精神論みたいになってきましたがw

 

 

 

だから、「実現したかもしれない今のとは違う世界」の欠片、負けた提案、つまり負けた不遇なモノを僕は心から狂おしいほど愛しています。

ロマンですかね笑

その姿勢と、コンセプトに敬意を払って。

 

 

 

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 "不遇カメラ③ ビデオカメラみたいなフィルムのハーフカメラ(静止画)"

 

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"不遇カメラ④ 特殊な操作系を実現し、デジタル一眼の元になろうとした(ならなかった)"

 

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"不遇カメラ⑤ 新しい操作系を提案したカメラ。コストカットの結果見た目安っぽい"

 

 

 

 

 

以上、勢いで書いてしまったので、ロジックその他破綻している部分は多々あるでしょう。

それでも、ものづくりを生業にしたいと思う一人間として、普段から思っていることを一度文章にしておきたいと思い書きました。

 

「みんなが未来について考えるといいな」って。

 

 

 

 

こちらからは以上でーす。

 

 

P.S. 不遇なカメラの写真で挙げているのは全て僕の手元にあるメジャーなフォーマットになれなかったカメラたちです笑

 

[以下、テンプレ]--------------------------------------------------

 

「flickr」始めました。(ちゃんと弄り始めました)

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